本文の校正のやりとりをしている間に、私のイラストをもとに作ったカバーデザイン案があがってきた。このデザインを見るのも本作りの楽しみのひとつだ。イラストはほぼイメージ通り。色の指定は特にしなかったが、「不安定な感じの色で」とお願いしたら、このデザインが上がってきた。黄色と紫とは想像もしていなかった色だ。自分だったら、もっと暗いグレーや茶を使ったような気がするが、この色使いはイラストにマッチしているな、と思い、特に修正する箇所はなかった。

もしカバーに修正を施すなら、具体的に指示をしたほうが良い。例えば「イラスト」はやや小さくとか、色は灰色と茶でとか。最初は曖昧なイメージでも、校正は具体的にしないと、いつまでたっても終わらないだろう。
本文の校正も全て終え、いよいよ印刷所に回す時が来た。これが最終チェックというと、なんだかもう取り返しがつかないような気分になり、文章を再度見直し、最終だと言われたにもかかわらず、数か所新たに赤字を入れてしまった。往生際が悪いな~と編集者に謝ると、「最後のチェックです、というと皆さん、あわてて文章を直したりされますよ」と言ってくれた。気分が楽になり、ようやく原稿を手放すことが出来た。
入稿から3週間後、本が我が家に届いた。
内容もカバーデザインも判っているので、そう感動もないだろうと思っていたが、これが大違い。「本」という形になった自分の作品を手にした時の感動はなんとも言葉に尽くせなかった。よく「作品」は我が子のようだ、という芸術家がいるが、その気持ちはよくわかる。手塩にかけて育てた子供なのだ。
「本」として自分の作品に目を通すと、友人の言葉がよみがえってきた。「2割増しで面白く読めるよ」 。うん。確かにその通りだ。自分の作品ではなく、星霜敦という作家の作品として読むと、面白さが倍増した。と同時に、欠点も目立つ。「自分ならこう書くのになあ……」などと、不覚にも思ってしまった。
いずれにしても、この久々の感動はしばらく味わったことのない新鮮な感動だったことは間違いない。